海外企業が中国メーカーにOEM製品の製造を委託する場合、製品仕様、図面、サンプル、技術基準、品質基準などを事前に詳細に合意することが重要です。
しかし、実際には、中国メーカーが承認済みの仕様と異なる製品を製造したり、合意された技術パラメータを満たさない製品を納品したりするケースがあります。
このような場合、単に「品質が悪い」というだけではなく、契約書、仕様書、承認サンプル、検査結果、電子メールやチャットの記録などを総合的に確認し、メーカーが契約上の義務を履行したかを判断する必要があります。
中国の裁判実務でも、契約で具体的な技術パラメータや部品仕様が定められている場合、それらの内容が契約履行の重要な判断材料となることがあります。最高人民法院が公表した事例でも、契約上の技術パラメータを満たしていないことが、契約上の義務の履行状況を判断する重要な要素となっています。
1. OEM製品の「仕様」とは何か
OEM契約における製品仕様には、通常、次のような事項が含まれます。
- 製品の寸法
- 材料
- 原材料の種類
- 部品およびコンポーネント
- 性能
- 技術パラメータ
- 電気的仕様
- 機械的仕様
- 色
- 表面処理
- パッケージ
- ラベル
- ロゴ
- 使用される部品のブランド
- 安全基準
- 試験基準
- 許容誤差
- サンプルとの一致
これらが契約書、Purchase Order、Technical Specification、Product Specification Sheet、図面、承認済みサンプルなどに明記されている場合、後の紛争で重要な証拠となる可能性があります。
そのため、「メーカーはこの仕様を知っていた」という口頭の説明だけに依存するのではなく、できるだけ書面で仕様を確定しておくことが重要です。
2. 中国メーカーによるOEM仕様違反の一般的な例
海外の買主が中国メーカーとのOEM取引で直面する問題には、次のようなものがあります。
材料が異なる
契約では特定の材料を使用することになっていたにもかかわらず、メーカーが安価な代替材料を使用するケースです。
部品が異なる
特定のブランドや型番の部品を使用する契約だったにもかかわらず、メーカーが別の部品に変更することがあります。
性能が不足している
製品が一定の耐久性、出力、精度、温度範囲、容量などを満たしていない場合があります。
寸法が異なる
製品のサイズや許容誤差が契約上の仕様を超えている場合があります。
サンプルと量産品が異なる
承認済みサンプルは仕様を満たしていたものの、量産品では材料、構造、色、部品、性能などが変更されているケースです。
技術パラメータを満たしていない
製品の特定の技術パラメータが契約上の基準を下回っている場合があります。
このような問題では、単純に「期待していた製品と違う」という主張だけではなく、どの契約条項、仕様書、図面、サンプルまたは技術基準に違反しているのかを具体的に示すことが重要です。
3. 承認済みサンプルは重要な証拠になる
OEM取引では、量産前にサンプルを製造し、買主が承認することがよくあります。
この場合、承認済みサンプルと量産品との違いが紛争の重要なポイントになる可能性があります。
例えば、
- サンプルではアルミニウムだったが量産品では別の材料が使用されている
- サンプルでは特定ブランドの部品だったが量産品では別メーカーの部品になっている
- サンプルでは一定の性能を満たしていたが量産品では性能が低下している
といった場合です。
したがって、サンプルを承認する際には、単に「Approved」と返信するだけではなく、可能であれば仕様、型番、材料、性能、許容誤差などを明確に記録しておくことが重要です。
4. 中国メーカーが「違いは小さい」と主張する場合
メーカーが仕様違反を認めず、
「違いは小さい」
「実際の使用には問題ない」
「業界では一般的な変更だ」
「同等品だから問題ない」
などと主張することがあります。
しかし、問題はメーカーが一方的に「同等」と判断できるかどうかではありません。
重要なのは、当事者間でどのような仕様が合意されていたかです。
特定のブランド、材料、寸法、性能、技術パラメータなどが契約上明確に指定されている場合、その変更が契約上許されていたのかを確認する必要があります。
中国の裁判例でも、契約上の具体的な技術パラメータが満たされているかどうかが、契約上の義務を履行したかを判断する重要な要素となっています。
5. 第三者による検査・試験
製品仕様違反が疑われる場合、第三者機関による検査や試験が重要になることがあります。
例えば、
- 材料試験
- 化学分析
- 寸法測定
- 性能試験
- 耐久性試験
- 電気試験
- 安全性試験
- 部品確認
などです。
特に、メーカー自身の説明と買主側の主張が対立している場合、独立した検査結果が紛争解決に役立つ可能性があります。
2026年に中国最高人民法院が紹介した外国関連商事紛争でも、契約上の部品ブランドや仕様について争いが生じたため、裁判所が専門機関による技術評価を利用した事例があります。
6. 証拠のチェーンを保存する
中国メーカーとのOEM紛争では、証拠を早い段階から整理しておくことが重要です。
少なくとも以下の資料を保存してください。
- 契約書
- Purchase Order
- Proforma Invoice
- Technical Specification
- Product Specification Sheet
- 図面
- CADファイル
- 承認済みサンプルの写真
- メーカーから提供されたサンプル写真
- 検査報告書
- 第三者検査結果
- メール
- Alibabaのメッセージ
- 支払記録
- Invoice
- Packing List
- Bill of Lading
- 不適合製品の写真・動画
- メーカーとの交渉記録
特に重要なのは、どの仕様がいつ合意され、誰が承認し、メーカーがいつ変更したのかを時系列で整理することです。
7. 問題を発見したら何をすべきか
不適合製品を発見した場合、買主はできるだけ早く対応することが重要です。
まず、製品の使用、加工、販売、再梱包などを開始する前に、証拠を保存してください。
次に、
- 契約書を確認する
- 仕様書を確認する
- 承認済みサンプルと比較する
- 製品を写真・動画で記録する
- 必要に応じて第三者検査を行う
- メーカーに書面で通知する
- メーカーの回答を保存する
- 契約上の救済措置を検討する
という手順を取ることが考えられます。
8. 製品の交換を要求できるか
契約内容、準拠法、製品の不適合の程度などによって異なります。
例えば、メーカーが契約上明確に指定された材料を使用していない場合、買主は交換、修補、再製造、代金減額、損害賠償などを求めることが考えられます。
一方、製品の一部に軽微な不一致しかない場合、契約を解除できるかどうかは別途検討する必要があります。
国際売買ではCISGが適用される場合もあります。中国の裁判所も国際売買紛争においてCISGを適用しており、契約に適合しない商品について、契約違反や損害の問題が判断されています。
9. 残金の支払いを拒否できるか
メーカーが仕様を満たしていない場合でも、買主が当然にすべての残金の支払いを拒否できるとは限りません。
まず確認すべきなのは、
- 支払条件
- 検査・検収条件
- 不適合品に関する契約条項
- 支払いと検収の関係
- 解除条項
- 違約責任条項
です。
例えば、契約上、最終支払いが検収合格を条件としている場合には、その条項が重要になります。
反対に、単に製品に問題があるという理由だけで契約上の支払い義務全体を停止すると、買主側が別の契約違反を主張される可能性があります。
したがって、残金を支払わない場合には、契約上および適用法上の根拠を確認することが重要です。
10. 中国メーカーに弁護士名義の通知書を送る
メーカーとの交渉が進まない場合、弁護士から正式な通知書を送付する方法があります。
通知書では通常、
- 契約関係
- 注文内容
- 合意された仕様
- 実際の納品内容
- 具体的な不一致
- 証拠
- 契約違反の内容
- 買主が求める救済
- 回答期限
- 今後の法的措置
などを明確にします。
メーカーによっては、単なる買主からのクレームよりも、正式な法律上の請求として提示された段階で対応を変更することがあります。
11. 海外の買主は中国メーカーを提訴できるか
状況によっては可能です。
ただし、実際に中国で訴訟を提起できるかどうかを判断するためには、少なくとも以下を確認する必要があります。
- 契約書
- 中国メーカーの正式な会社名
- 統一社会信用コード
- 登録住所
- 契約の管轄条項
- 仲裁条項
- 準拠法条項
- 支払記録
- 納品場所
- 紛争の発生場所
- 不適合製品の証拠
国際取引では、裁判所の管轄だけでなく、契約上の仲裁合意の有無も非常に重要です。
12. 仲裁条項がある場合
契約に仲裁条項がある場合、通常、契約で指定された仲裁機関と仲裁地を確認する必要があります。
例えば、中国国内の仲裁機関が指定されている場合には、中国で仲裁手続を行うことが検討されます。
一方、海外仲裁が指定されている場合には、別の手続が必要になる可能性があります。
したがって、契約書の紛争解決条項は、OEM取引を開始する前から慎重に確認することが重要です。
13. メーカーが「買主が仕様を変更した」と主張する場合
OEM紛争では、メーカー側から、
「買主が後から仕様を変更した」
「最終仕様について承認を受けていない」
「買主が追加要求をした」
「サンプルは最終仕様ではない」
といった反論が出ることがあります。
この場合、メール、WeChat、WhatsApp、Alibabaメッセージ、図面、Purchase Order、承認記録などを時系列で整理する必要があります。
特に重要なのは、最終的にどの仕様が契約上合意されていたのかです。
単独のメッセージだけではなく、契約書、添付資料、仕様書、サンプル、変更履歴などを総合的に検討する必要があります。
14. OEM仕様紛争を防ぐ方法
中国メーカーとのOEM取引では、契約締結時から証拠を作っておくことが重要です。
例えば、
仕様書を契約書に添付する
単なるメールの説明ではなく、最終仕様を契約書または契約添付資料として明確にします。
サンプルを明確に識別する
承認済みサンプルには、可能であれば日付、型番、バージョンなどを記録します。
変更手続きを決める
メーカーが仕様を変更する場合には、買主の書面による承認を必要とする条項を検討します。
検査条件を定める
第三者検査、工場検査、出荷前検査などについて、誰が検査費用を負担するかも含めて契約で定めます。
不適合品に対する救済を定める
交換、再製造、修補、代金減額、損害賠償などについて、できるだけ具体的に規定します。
紛争解決条項を確認する
中国メーカーとの取引では、裁判または仲裁のどちらを利用するのか、どの機関・裁判所が関係するのかを契約段階で確認します。
15. 中国メーカーとのOEM仕様紛争では証拠が重要
OEM製品の仕様違反をめぐる紛争では、単に「届いた製品が悪い」と主張するだけでは十分ではありません。
重要なのは、
何を注文したのか
どの仕様について合意したのか
メーカーが何を納品したのか
どの点が契約内容と異なるのか
その違いをどの証拠で証明できるのか
という点です。
中国の裁判実務でも、契約上の具体的な仕様や技術パラメータが履行判断の重要な基準となることがあります。
16. まとめ
中国メーカーがOEM製品の仕様を満たさなかった場合、まず感情的にメーカーと交渉するのではなく、契約上の仕様と実際の納品物を比較することが重要です。
特に、
- 契約書
- Purchase Order
- Technical Specification
- 承認済みサンプル
- 図面
- 検査報告書
- 写真・動画
- メーカーとの通信記録
を整理してください。
そのうえで、交換、再製造、修補、代金減額、損害賠償、契約解除、弁護士による正式な請求、訴訟または仲裁など、具体的な救済手段を検討することになります。
中国メーカーとのOEM紛争では、「製品が期待どおりではなかった」ことよりも、「製品が合意された契約仕様に適合していないことを証明できるか」が重要になる場合があります。
海外企業が中国メーカーとのOEM契約について問題を抱えている場合、契約書、仕様書、承認済みサンプル、検査資料、支払記録、メーカーとの通信記録などを整理したうえで、早い段階で中国の弁護士に相談することが有益です。
本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、 個別の法律問題に対する法的助言を構成するものではありません。 法律および法的手続は、具体的な事実関係および適用される法域によって異なる場合があります。 本記事の閲覧または本ウェブサイトを通じたお問い合わせのみをもって、 弁護士と依頼者との間に委任関係が成立するものではありません。 個別の案件については、正式な委任関係が成立した後、個別の法律相談を受ける必要があります。